清瀬市に位置する「日枝神社」と「水天宮」は、同じ敷地内に隣り合わせて立つ、歴史と神秘が交錯する場所です。
この記事では、日枝神社と水天宮の魅力を探求し、その特徴やアクセス方法、周辺地域についても詳しくご紹介します。日本の伝統と文化を感じる旅へ出発しましょう。
日枝神社・水天宮の概要
清瀬10景の一つ
清瀬10景は、1990年(平成2年)の市制施行20周年を記念して設立され、市民投票と選定委員会によって清瀬市の代表的な景勝地が選ばれました。その中の一つが日枝神社・水天宮です。
この神社は、その歴史的重要性とともに、地域文化に対する貢献でも知られています。
日枝神社の本殿や不動明王立像、三猿の石灯篭は清瀬市の指定有形文化財、毎年境内で行われる清戸の獅子舞は無形民俗文化財に指定されていることからも、その文化的価値が高いことが分かります。
<清瀬10景 一覧>
- けやき通りと郷土博物館
- 志木街道
- 東京病院の桜の園と社会事業大学付近
- 清瀬金山緑地公園
- 柳瀬川とさくら並木
- 空堀川と中里緑地保全地域
- 松山緑地保全地域
- 日枝神社・水天宮
- 中里富士塚
- 円通寺
同じ敷地内に2つの神社が併設
清瀬市には、日枝神社と水天宮が同じ敷地内に鎮座しており、これは非常に珍しい配置です。日枝神社が先に創建され、水天宮は摂末社の一つとして祀られています。
摂末社とは、本殿とは別に御祭神にゆかりのある神や地主神などを祀る小さな社のことで、日枝神社の境内には、水天宮のほかにも御嶽神社、八雲神社、琴平神社、白山社が存在します。
しかし、水天宮は他の摂末社とは異なり、日枝神社と同等の扱いを受けており、専用の鳥居と参道が設けられています。「日枝神社・水天宮」の名称でも知られており、公式な案内でも両神社が並び立つ存在として紹介されています。
また、御嶽神社も他の摂末社より特別な扱いを受けており、専用の鳥居を有するなど、その存在感を示しています。
日枝神社(ひえじんじゃ)について
日枝神社の始まり
清瀬市の日枝神社は、1579年(天正7年)に中島筑後守信尚によって創建されたと伝えられています。
日枝神社の起源は、神祇信仰と仏教信仰が融合して信仰されていた神仏習合の時代に遡ります。
日枝神社の総本宮である日吉大社は比叡山の麓に位置し、主祭神として大山咋神を祀っています。この地には後に天台宗の延暦寺が創建され、延暦寺の守り神として日吉大社で祀られている山王権現(大山咋神を含む山の神々の総称)を崇拝していました。
天台宗の教えが日本全国に広がると共に、天台宗の鎮守神である山王権現を祀る山王社も全国各地で建立されることとなりました。
その後、明治時代に神仏分離が発令され、神道と仏教が明確に区別されたことで、山王社は日枝神社という新たな社号に改称されました。同時に、山王権現も廃され、日枝神社の御祭神は大山咋神に統一されました。
御祭神と御利益
大山咋神(おおやまくいのかみ)
名前の「咋(くい)」は杭のことで、大山に杭を打つ神、すなわち大きな山の所有者の神を意味し、比叡山や松尾山の地主神とされています。
大己貴神(おおなむちのかみ)
大己貴神は、大国主(おおくにぬし)の別名で知られており、他にも数多くの別名を持ちます。多くの妻子を持つことから縁結びの神様として有名ですが、国づくりや医療の普及など、数多くの逸話があり、御利益の多い神様です。
水天宮(すいてんぐう)について
水天宮の始まり
水天宮の総本宮は福岡県久留米市に位置し、1650年(慶安3年)に2代目久留米藩主・有馬忠頼により創建されました。清瀬市の水天宮は総本宮の御祭神を分霊して祀っています。
清瀬の水天宮は明治時代に村人の安産守護を願って創建されたといわれていますが、正確な時期は不明です。
なお、東京都の水天宮の起源は、1818年(文政元年)に9代目久留米藩主・有馬頼徳が参勤交代で江戸に長期滞在する間も参拝できるよう、江戸の芝赤羽町(現在の港区三田一丁目)の藩邸に総本宮の御祭神を分祀したことに由来するとされています。
御祭神と御利益
安徳天皇(あんとくてんのう)
安徳天皇は、1180年(治承4年)に第81代天皇として即位しました。当時の年齢は満1歳(数え3歳)であり、歴代最年少の即位です。即位から5年後の壇ノ浦の戦いで源氏に敗れ、満6歳で入水自殺しました。死後の安徳天皇は、水の神・安産の神として各地の神社に祀られています。
住吉三神(すみよしさんじん)
住吉三神とは、底筒男神(そこつつおのかみ)、表筒男神(うわつつおのかみ)、中筒男神(なかつつおのかみ)の総称で、航海を守護する海の神です。住吉三神は、黄泉の国から逃げ帰ったイザナギが黄泉の国の穢れを洗い清める「禊」を行った際に生まれました。
清戸の獅子舞:境内で行われる伝統行事
清戸の獅子舞は、日枝神社・水天宮の境内で毎年行われる、五穀豊穣、厄除けの祭りです。
山の神が行列の先頭を舞いながら進み女獅子・中獅子・大獅子が太鼓をたたきながら笛の音に合わせて練り歩き、社殿の前で舞を踊ります。
日本の獅子舞は「伎楽系(西日本)」「風流系(東日本)」の2系統に大別され、清瀬市の獅子舞は1人が1匹の獅子を演じる「風流系(東日本)」に属します。
ひいらぎ伝説:清瀬の名と日枝神社の関係
ひいらぎ伝説は日枝神社境内にあった大きなひいらぎの木に関する伝説で、清瀬の名に関係しています。清瀬の名は「清戸」と「柳瀬川」に由来するとされていますが、ひいらぎ伝説は「清戸」という地名に関わっています。
大昔、ヤマトタケルが東北への遠征に向かう途中、清瀬の地を通った際に大きなひいらぎの木の下でお休みになったそうです。
そのとき、なにげなく足元の土を手にとって、「清き土なり」といったそうで、これが「清戸(清土)」の由来とされています。
ヤマトタケルは、景行天皇12年出生、景行天皇41年死去とされているため、当時は日枝神社(1579年創建)はなかったと思われます。
景観と実際に行ってみた感想
家から近いですが、他にも用事があったので車でいきました!
駐車場は横に広いタイプで、駐車に困ることはなさそうです。
ちゃんと日枝神社用の鳥居、水天宮用の鳥居がありますが、今回は駐車場前の鳥居から入りました(笑)
鳥居を抜けると車祓所と御嶽神社がありました。
さらに先には水天宮と日枝神社があります。どちらで参拝するか迷いますね(笑)
実際の滞在時間的には5〜10分程度。
敷地はシンプルかつ小さいので、散歩コースのひとつくらいの気持ちで行った方が良い気がします。
アクセス
〒204-0012
東京都清瀬市中清戸2丁目616−2
<車でのアクセス>
清瀬駅から6分
駐車場あり(最大100台)
<公共交通機関でのアクセス>
清瀬駅から徒歩15分
清瀬駅北口3番のりば/西武バス(清63)から
けやき通り/西武バスまで約2分
そこから徒歩7分
清瀬駅北口3番のりば/西武バス(清64)から
水天宮前(東京)/西武バスまで約2分
そこから徒歩3分
行く前に知っておきたい豆知識
境内にある建物の名前と役割
事前に境内にどんな建物があり、どんな役割を果たしているのかを知っていれば、より楽しく境内を回れると思います。
ここでは日枝神社・水天宮の境内の建物を紹介します。
本殿と拝殿
本殿(ほんでん)は神様がいらっしゃる建物、拝殿(はいでん)は参拝者がお参りをする建物のことです。
摂末社
摂末社(せつまつしゃ)は、本殿とは別に御祭神に所縁のある神様や地主神などを祀っている小さな社です。
厳密には摂社(せっしゃ)と末社(まっしゃ)に分けられ、御祭神と関係の深い神様を祀っている社は摂社、あまり関係のない神様を祀っている社は末社と区別されているようです。
日枝神社・水天宮の境内には、摂末社として御嶽神社・八雲神社・琴平神社・白山社があります。
御嶽神社については、鳥居や参道も整備されており、他の摂末社よりも特別扱いされています。
鳥居(とりい)
神社に行って最初に目に入るのが鳥居です。
鳥居は、神社の内側の神聖な場所(神域)と外側の人間の暮らす場所(俗界)の境界を表しています。
日枝神社・水天宮には、日枝神社と水天宮の御本殿に向かう入り口にそれぞれ1つずつ鳥居があります。
その他に、駐車場からの入り口や、前述した御獄神社の入り口にも、鳥居が1つずつ設けられています。
手水舎(ちょうずや)
手水舎は、拝殿へ参拝に行く前に身の穢れを清める場所です。
一般的には「ちょうずや」と読みますが、「ちょうずしゃ」「ちょうずしゃ」「てみずや」「てみずしゃ」など様々な読み方がされています。
社務所と授与所
社務所は、社務すなわち神社の事務を行う場所です。中では神主さんや巫女さんなど神社職員が事務作業を行っています。
授与所は、参拝者がお守りなどを頂ける場所です。
社務所と授与所を別々に設置している神社もあれば、一緒になっている神社もあります。
日枝神社・水天宮の場合、社務所と授与所が別々で設置されています。
車祓所(くるまばらいしょ)
車とドライバーが穢れをお祓いして交通安全を祈願する場所です。
御神木(ごしんぼく)
「特別に神聖視される樹木」のことを指します。
日本古来から伝承される自然に神が宿るという信仰の中で、樹木、岩、山、滝が神の依り代として崇められてきました。
日枝神社・水天宮の御神木であるスギの木は、清瀬市指定天然記念物の他、清瀬の名木・巨木百選にも選ばれています。
宝物庫
宝物庫は、その名の通り、数々の文化財指定品や祭祀遺物等を保存する建物です。一般展覧している施設もあります。
神社、大社、神宮、宮の違い
日枝神社・水天宮は、一方は「神社」なのに対して、もう一方は「宮」という社号が付けられています。
この基準が何なのかご紹介します。
神社と大社
神社は、日本古来の神様を祀る一般的な施設のことです。
大社は、全国にある神社の総本社や格付けが高い神社のことです。例えば、日吉大社は、全国にある分霊社(日枝神社や日吉神社)の総本社なので、大社の社号が付けられています。
神宮と宮
神宮は、天皇・皇室祖先神・神器を祀っています。
宮は、神宮より格式は下がり、皇室に関係する神様、身分の高い人や皇族などが祀られています。ただし例外もあり、水天宮の場合は安徳天皇を祀っているので神宮に該当する気がします。