清瀬市の結核療養地としての歴史

清瀬市について
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清瀬市の歴史には、結核対策の一環としての役割が色濃く残っています。

この記事では、結核とは何か、そして清瀬市がいかに結核療養地としての重要な役割を果たしてきたかについて探ってみましょう。

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結核の基本知識

結核とは

結核は、マイコバクテリウム・チューベルクローシスという細菌による感染症で、主に肺を攻撃します。

咳、痰、発熱、体重減少などの症状があり、空気感染で広がります。

明治時代、結核は日本全体で広く広まっていた感染症で「国民病」「亡国病」と恐れられており、空気感染するため差別の対象となる疾病でした。

当時は医療技術が未発達だったため、結核は重篤な病気として恐れられており、多くの人々が罹患しました。

現在はBCGワクチンや抗結核薬の普及により、結核の死亡率は激減しています。

とはいえ、今でも年間約10,000人が罹患、約1,600人が死亡する重大な感染症であることに変わりありません。

結核(BCGワクチン)
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結核療養所(サナトリウム)とは

結核療養所(サナトリウム)は、明治20年代にドイツ人医師E・v・ベルツによって日本に導入されました。

当時は結核の治療法は確立されていないおらず、「空気の綺麗な場所で、十分な栄養を取り、安静にして病状の改善をはかる」というサナトリウム療法が一般的だったようです。

清瀬市の結核療養地としての歴史

清瀬市が結核療養地になった背景

当時、結核療養所(サナトリウム)は私立が中心で、入院料が高く、富裕層しか入院できませんでした。

東京にある公立の結核療養所は東京市療養所のみで、結核患者の収容が間に合わず、結核療養所の開設が急務でした。

そこで着目されたのが清瀬市(当時、清瀬村)でした。

清瀬市は、都心から25km圏内に位置しながら自然豊かであり、地理的状況や環境が結核療養に適していたことから、相次いで結核療養所が開設されました。

そして清瀬の名は「結核のまち」として全国に知られるところとなりました。

清瀬と結核|清瀬市公式ホームページ
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清瀬市に開設された結核療養所

1931年(昭和6年)に清瀬病院が開設されたのを皮切りに、清瀬市には相次いで結核療養所が開設されました。

私が調べた限り、以下の10施設が昭和時代に開設されたようです。(小規模な療養所も含めると、実際にはもっとあるはずです。)

昭和6年:清瀬病院
昭和10年:ベトレヘムの園病院
昭和14年:傷病軍人東京療養所
昭和14年:清瀬療養園
昭和14年:上宮教会清瀬療園
昭和15年:信愛病院
昭和18年:清瀬保養園
昭和23年:清瀬小児結核保養所
昭和27年:織本病院
昭和33年:結核研究所付属療養所

結核療養地 清瀬市の現在

結核療養所の現在の姿

結核療養所として始まった病院も、時代の流れによって閉院していきました。

一方、前述した10施設のような大きい病院は、結核専門病院から一般病院へと移行するなど、形を変えて現存しているようです。

いずれも昭和時代に開設された病院なので少し古い風貌(改装して綺麗な病院もあります)ですが、確かな実績と歴史ある病院です。

清瀬病院
清瀬病院と傷病軍人東京療養所が統合し、国立病院機構 東京病院 として現存。
ベトレヘムの園病院
引き続き現存。
傷病軍人東京療養所
清瀬病院と傷病軍人東京療養所が統合し、国立病院機構 東京病院 として現存。
清瀬療養園
救世軍清瀬病院として現存。
上宮教会清瀬療園
清瀬リハビリテーション病院として現存。
信愛病院
引き続き現存。
清瀬保養園
竹丘病院として現存。
清瀬小児結核保養所
小児総合医療センターに統合され現存。
織本病院
きよせ旭が丘記念病院として現存。
結核研究所付属療養所
複十字病院として現存。

都内トップクラスの病床数

結核療養地として、清瀬市には多くの病院が開設されました。

その結果、人口や面積が少ないにも関わらず非常に多くの病院が立ち並ぶ医療の街になりました。

人口あたりの病床数は都内3位(全国45位)です。結核病床に限定すれば、令和3年10月1日時点で都内269床のうち208床(約8割)が清瀬市の病院街にあります。

東京都の1万人当たり病床数(順位)一覧│ランキングと都市データ 【OCN不動産】
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おわりに

本記事では、清瀬市の結核療養地の歴史を辿り、結核対策の進化と地域への深い影響を見ていきました。

結核療養所の設立から現在の医療機関への変遷は、地域の健康への取り組みと技術の進歩を物語っています。

地域社会と健康を結ぶこの歴史は、未来への大切な教訓であり、結核根絶と共に健康な未来への道しるべとなっています。

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